● 能

 木曽から来た僧が都に上る途中、粟津で休んでいた。すると、一人の女性が現われ、神前で涙を流すので、声をかけてみた。女性は「義仲がここで討死にし、この祠にまつられている」と語り、夕暮れの中に消えていった。
 
夜、僧が同郷の義仲に思いをはせながら祠のそばで読経していると、夕闇に消えたあの女性が甲冑姿で現れた…実は巴の亡霊だったのだ。巴は義仲に「故郷にいる妻に小袖を渡して欲しい」と頼まれ、最期の戦いまで共にすることを許されなかったことを語る。そしてその執念を晴らして欲しいと僧に願って消えていった…。
初出/木曽義仲の基礎知識 別冊「古典芸能」

大変人気がある演目で頻繁に公演されています。女性が出てくるのに修羅物(武具を持って立ち回るタイプの内容)というのが人気の秘密でしょうか。

木曽義仲の基礎知識/kaori-nishikawa1996