●史料

義仲の研究の「基本史料」を紹介します。

1・平家物語
木曽義仲と言うと、まず知られているのは「平家物語」です。平家には諸本があり、手に取りやすい文庫となっているものに最もポピュラーな「覚一本」と、坂東で産まれた平家物語とも呼ばれる「源平闘ジョウ録」があります。注釈がついている物や、ついていないもの、現代文のみなどさまざまなスタイルのものがあるので、書店などで比べてみてください。
義仲に関する記述では「延慶本」が特に詳しく、「長門本」がこれに次ぐと言いますが、どちらも手に入りにくい状況にあります。ただ、「延慶本」については現在学生向けの廉価版が順次発行中で、いずれ義仲登場巻に至ると見られます。
平家物語の異本と言われる「源平盛衰記」は新人物往来社より90年代に発行され、図書館などでよく見かける事ができます。

ともかく、同じ「平家物語」といっても、異本それぞれに書かれている内容で共通しているのはあらすじ程度で、細かいディティールは大変異なっています。それを読み比べるのも一つの楽しみです。

2・吾妻鏡
源頼朝が開いた鎌倉幕府の公式記録で、抜け落ちている年があるとはいえ、義仲の動向について、また有名な清水冠者と大姫の悲劇などについて詳しく知る事ができます。非常にポピュラーな史料なので、注釈なしのものならどんな図書館でも見つけられると思います。読下し版は全6巻で発行されています。

3・玉葉
義仲と同時代を都で生きた九条兼実の日記。義仲に関して好意的に書かれている部分が多く、松本利昭氏の小説「巴御前」をはじめとする著作で大々的に取り上げられ注目を集めました。
しかし、図書館での所蔵はまれで、あまり見かけません。読み下し版の「訓読玉葉」もありますが、そちらも同様です。また、同じタイトルの全く違う本もありますのでご注意下さい。

4・愚管抄
義仲と同時代を都で生きた僧・慈円による歴史書。義仲の扱いは小さいですが、その注釈に見るべきものがあります。

5・保元物語
義仲はもちろん出てきませんが、一世代上の武将たちが多く登場します。(根井など)
岩波書店の日本古典文学大系31に収録されていましたが、最近発行された新シリーズでは元にした本が違うので、根井は出てこなくなってしまいました。古い「日本古典文学大系」で探してください。

6・台記
藤原頼長の日記。義仲の父・義賢が登場します。当時の貴族社会の風習はショッキングです。

7・御伽草紙「しみづ物語」
義仲の息子・清水冠者義高と大姫の悲恋をモチーフにした室町時代の作品。
史実とは異なる部分もあるものの、現代までに至る「義高・大姫」のラブストーリーの根源的作品といえ、二人に興味を持つ人は必見でしょう。
読み下しは信教出版部発行の「現代口語訳信濃古典読み物叢書B木曽義仲物語」に収録されています。
他に、義仲関係の御伽草子作品には「唐糸草紙」があり、同じく信教出版部から同シリーズに収録され発行されています。