だれでもわかる 義仲のヒミツ
●第1回義仲って言うと・・・ ●第2回義仲の意外な真実 ●第3回義仲の「木曽」はどこの木曽?

西川かおり

当サイト管理人。長野県出身。
へタレ漫画家。
丸先輩

西の高校の先輩。
動物を得意とするスーパーアシ
義仲のことはほとんど知らなかった。


第4回 義仲の信濃経営〜頼朝はなぜ義仲を恐れたか〜



大河ドラマでも義高が討たれて義仲軍勢の話も終わりって感じだね。
なんかあたしは不真面目にしか見てないんだけども。

そうですね。
一気にテンションが下がっちゃって、困りものです・・・。タッキーの直垂姿も何だか見慣れてきちゃって…鎧だとまだ萌えるんですけども。
義経のキャラ立ちが弱いんですよね。私には何をしたくてどこへ行きたいのかさっぱりわかりません。
なーんて人の創作物にケチをつける前に、人様を納得させられる創作物を漫画家ならばお前も描いてみろって自分ツッコミっすよ・・・(涙)
なんど「義仲のキャラが弱い」と言われた事でしょうかね(遠い目)

まあ気長に行きましょうよ。主婦向けを描いていてもいつかチャンスが・・・

主婦向けでチャンスがあるんでしょうかね?いや、やれといわれれば、そういう角度でも描けそうな気はしますがね、「義仲をめぐる女のドロドロ」
・・・ある意味、義仲作品の王道ですな。「新平家物語」も、義仲をめぐる女達の大修羅場の連続・・・
あれ?期せずして今回のテーマにぴったりな振りになってしまいました。

えっと、巴ちゃん以外に何人義仲の女がいるんだっけ?
「平家物語」でも何人か出てくるの?

「平家」で出てくるのは、巴と山吹です。
木曽最期のチョット前の部分・・・巴が最後の活躍を見せる部分で、「二人の女武将を具せられけり」とか言う文が出てきます。
この一文が、「義仲女好き説」を作り出した要因?って感じですね。・・・でもさー義経にせよ、清盛にせよ、周りに女だらけなのにねー・・・

まあまあ。で、山吹ってどんな活躍をしたの?

・・・残念ながら何も(爆)

信濃から来たんだけど都で病気になって・・・みたいに書いてあるんですが、ここに一つ大きな問題があるのでチョット説明しますね。
巴ですらいわゆる「史料」に登場しないので、実在を怪しまれているんですけども、山吹にいたっては「絶対いない。装飾語だ」と言い放つ人もいるんです。

装飾語って何・・・?人間に対して使う言葉かい?

実はですね・・・平家物語と言うのは、後世では理解しがたい特徴があって、その中に「ストーリーの本筋に必要ない登場人物を増やす」というのがあるんです。

現代の漫画だったら、まずカットされますよ。
つか、大河ドラマでもカットですよ。
登場人物はカットしてカットして・・・必要な人物まで誤ってカット。

何だか多方面の恨みがこもってるねぇ・・・。

はあぁ。
何て言うかですね、「平家物語」というのは「似たような立場の人物を二人出して、そのうち一人については軽く扱い、もう一人については重く扱うことでキャラを立てる」という、不思議な手法がとられているんです。

例えば、大河義経辺りじゃ全然スルーだったんですが、平家物語には清盛が囲った「祇王・祇女」という白拍子が出てきます。
二人出てきたからにはそれぞれに個性があって対照的な活躍をするのかな?と思いきや、描写されるのは祇王だけ。
他にもそういう扱いをされている登場人物というのがたくさんいるみたいです。(あいまいでスミマセン。この辺は史学というより国文の分野なので。)

おお。放映時間もページ数も制限が無い時代だからこそ出来た手法!?

いんやぁ贅沢ですね〜(笑)
おまけに、厄介なことに「二人出てきて、軽く扱われる方の人物」の中には、架空の人物もいるのです。
つか、ほとんど架空の人物?みたいな。

えー!?いいの?「平家物語に出てくるのは歴史上の人物」だと思ってたよ!?

だから、史料で確証がとれない山吹は架空の人物である可能性もあるわけです。

そんな…
まあ。義仲は巴ちゃんが独り占め☆でもいいけど。

先輩・・・
ただ、
「二人出て来るうちの一人は絶対架空の人物」とは言い切れないんです。
例えばね、義仲を頼ってきた叔父がいますよね。

小憎たらしい「行家」以外に誰かいたっけ・・・?

いるんですよ。「義広」という叔父が。大河ではセリフで出てきたかな・・・私も記憶があいまいですが・・・

まあ、「平家物語」の中では「行家と義広と言う二人の叔父が義仲に頼ってきた」と出てきて、描写されているのは行家のことがほとんどです。
つまり、義広は二人出てくるうちの軽く扱われてる方なわけです。でもこの人は確実に実在しています。

おまけに、史実では義仲敗死後、反頼朝の動きをするのですが、「平家物語」では、行家と一緒に義経の軍に加わったり意味不明な行動を取らされています。
あくまで、「平家物語の義広」は行家のための装飾語なわけですよ・・・

行家って、義経の軍に加わったの!?ビックリだぁ!

そーなんですよ。大河ではどうなのかわかりませんが。

まーともかく、「平家物語」に出てくる人物とその描写が、史実とも架空とも言い切れませんし、史実かどうかを確証するには、源平時代は遠すぎ・・・ということなんですよ。
巴だ山吹だ以前に、義仲自体に関する「史料」だって、少ないわけですからねぇ。

ふーむ。じゃあ「平家」にすら出てこない、信濃時代の義仲のことなんて、わかんないんじゃないの?

「それが書いてある史料を出せ」とか「物証を!!」といった厳密な「史実」としては難しいかもしれないですね。
ただ、足取りは「伝承」から伺えるんですよね・・・

「伝承」なんてそんなにいっぱいあるの?

ありますよー・・・いろいろとね。
その辺から義仲の女性関係に付随する「義仲の信濃経営」と頼朝が義仲を恐れたワケを語りたいと思います。

7月26日更新開始

第3回「義仲の木曽はどこの木曽?〜消された名字の地〜」
第2回「義仲の意外な真実〜延慶本・横田河原合戦をネタに語る〜」
第1回「義仲って・・・〜二次創作物により描かれた義仲像〜」
木曽義仲の基礎知識/kaori-nishikawa1996